テクニックを『考える』流れ-『カッティ』を例に (その2)

■ 「どうしてバイクを傾けると滑るのか」を考える

 ただやっていてもなかなかできないことがわかったので、動作の特徴『自転車を倒しこむ』をすると『どうして後ろタイヤが滑る力が発生するのか?』を考えることにしました。

● 傾いた後ろの車輪の車軸へ『上から』力をかけたら?

 いろいろ考えた末に思いついたのは、「傾いた車軸へ『上』からの荷重を増加させれば後ろタイヤを滑らせることができるんじゃないか?」ってことでした。

 

 車輪が倒れる(自転車が傾く)時、タイヤの接地点を中心とした円弧を描くように倒れていきます。
(実際にはその接地点もタイヤ断面に沿って移動しますが、今回は省略)

イラストは別の件で作ったものなのでちょっと違うけど

 イラストでは『重心』となっていますが、今回の場合は『重心』ではなく『荷重点』とでもした方がいいかもしれません。
 自転車(自転車+ライダー)の重量は、一旦前後の『車軸』を経由して地面へ伝わるからですね。
 (抵抗なしの回転時。ブレーキ時は(仮想点として)その度合いによって中心から移動した仮想点を考える)

 

 上の図は、地面との『摩擦力』が『車輪の傾倒によって生じる横向きの力』をしっかり支えてくれている場合です。

 ですから地面の摩擦力が『0』になった場合はこんな感じかな?と推測しました。

 これ↑をもう一歩進めて『(傾いた)車軸に真上から大きな荷重を加えれば、接地点が横向きに押し出される=滑る』のでは?って思いつきました。
(前提としてある程度車輪を斜めにしておいてから押す)

 最初は『横』から『外に押そう』としてたのを、今度は『上』からの荷重を増やして『間接的に押し出そう』ということです。

 

 これは結論から言うと『失敗』しました。

 「後ろタイヤを押し付けよう」とすればするほど、後ろタイヤは滑りにくくなる感触すらあります。。。

 しばらくいろいろと試した結果、後ろタイヤ(車軸)に上からの力をかけても、横に滑ろうとする力よりも接地点の摩擦力の方が大きくなるということかな、と考えました。

 よくよく考えてみると、この『上から腰を落とす動作』には『車輪を傾ける』要素があまりないってことに気がつきます。
 つまり、角度は変わらないまま上から押す力を増やしてる=摩擦力が増してしまうようです。

 でも、これによって『(後ろタイヤに対して)上からの荷重』はあまり増やさない方が良さそうだと推測もするようになりました。

 そうして『上からの荷重を増やして押し出す』は、原理としての可能性は残しつつ、いったん保留にして違うことを考えることにしました。

 

■ 『タイヤが滑ること』についても考えた

 並行して「タイヤの接地点が滑る具体的なイメージ」についても考えてました。

 ブレーキングターン(ブレーキでロックさせて滑らせる)時には、タイヤは回転を止めているのでタイヤ表面の『接地点』は変わらないのですが、カッティはタイヤは回転しながら滑っていくのでタイヤ表面の『接地点』は次々と更新されていきます。

タイヤ転がる時、接地点(周辺部の任意の点)の移動イメージ
荷重点が前に移動すると、接地点は新たな点へと更新され続けることで車輪は転がることができる

 なので『滑る』というよりは『(軌道が)少しづつズレる・ズレていく』と考えるほうが近いと考えることにしました。

 要するに『タイヤが1°回転するごとに1mmタイヤが本来の軌道からズレることができれば100°で100mm横にズレる』ということです。

 また、そのズレも以下の2点によるものを考えました

  • 摩擦力を超える力によって生じる『滑り』
  • タイヤのゴム(パターン)が捩れと新たな(捩れていない)接点への移行によって生じる『ズレ』
    『捩れる→新しい捩れてない接地点に移動→また捩れる→新しい捩れてない接地点に移動』の連続。
転がって新たなパターンが接地するたびにパターンの『ヨレ』を生じさせることができる
この『ヨレ』によって次の接地点の更新までに軌道のズレを生み、結果的に後ろタイヤがズレるような現象が発生すると考えた

 柔らかな土の地面などであった場合、タイヤパターンはヨレなくても地面側が変形(削れる・凹む)などによって同じような現象が起きると考えられます。

 ブレーキでタイヤの回転を固定して滑る場合は一点めだけの理由となります。

 よく滑るタイヤとグリップ力の高いタイヤで同じ路面を走った場合、その走行ラインが違ってくるというのを経験上で知っていたので出てきた発想です。

 また、これらから、アスファルトのようなグリップ(摩擦)力の高く変形しない路面では、ダウンヒルタイヤなどのサイドのノブ(タイヤパターン)が高くゴムの柔らかいタイヤの方がずらしやすい、と考えられます。もちろん同じタイヤで土の路面でもできます。
 反対に、サイドパターンが低いorないスリックやストリートタイヤはゴムの変形が少ないため、アスファルトのようなグリップ(摩擦力)の高い路面では難しく、土などの路面ではやりやすいのではないかと考えています。

 これは、これまでいろんなタイヤで試した結果そのようになっているのでおそらく間違っていないだろうと考えています。
 ただ、そうであってほしいという願望(フィルター)がかかっている可能性も否定しません。

■ 『後ろの車輪を倒すこと』と『接地点がズレること』の2点から考えたこと

 『後ろの車輪を倒すこと』と『接地点がズレること』を合わせて、ぼんやりと以下のようなことを考えていました。

  • 『車輪を倒したら外に押し出される』は、『上から力を加える』方法では実現できなかった。
  • しかし、タイヤのゴム(パターン)を変形させるには何らかの『力』を加える必要がある。
  • 後ろのタイヤから荷重を抜くと、接地点への荷重も減るのでタイヤを変形させることができなくなり『ズレ』は起きにくいのではないか?
  • 『身体の動作(移動)によって生じる力』は、瞬間的な発生なので継続性がない。
  • 遠心力を増す(速度を上げるなど)にしても、それを後ろタイヤだけに伝えるにはどうしたらいいのか?
  • やっぱり『車輪を倒して押し出す』は、使えるのではないか?

 つまり『車輪を倒す→押し出される論』にこだわっていくことにしたのです。

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