ライザーバーの角度について

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今回はマウンテンバイクなどでよく使われる『ライザーバー』とその取り付け角度について考えます。

また、ここでの話は主にマウンテンバイク用途の話です。
特にトライアル的『前倒し』ポジションについては、あまりに特殊なのでまた要望があれば別途説明します.

■ ライザーバーってどんなの?

ライザーバーは、その中心となるステムクランプ部(取り付け部)からグリップを取り付ける部分=握る部分が上がっている(ライズしている=ライザー)ハンドルバーのことです。

色変わってるのは曲がってるところを強調してるだけです。
あと、イラストの角度は適当です。ご容赦ください。

■ 『ライズ』ってどこ?

ライザーバーと言っても色々な『サイズ』があります。
特にその『ライズ量(上がっている量)』は『ハンドル幅』や『スィープ』と共にハンドルポジションに大きな影響を及ぼします。

このライズとはどこのことかというと、多くのメーカーではこんな感じです。

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フラットバーやライザーバーは、ライダーが使いやすいように『握る部分=グリップ』に角度がつくように曲げ加工がしてあります。

これを『スィープ』または『ベント』と呼び、これらの角度のことを『スィープ角』『ベント角』と言います。
今は『スィープ』の方がよく使われているようですから以下『スィープ』で書きます。

多くのメーカーではライザーバーの『ライズ』とは、この『スィープ』の曲げ始めの位置(上図で緑色の丸)の中心が、ステムクランプ部(ステムで固定する部分)の中心(ハンドル中央)が『上がっている=ライズ(下から上に昇るの意)』ことを示してます。

※ ライズが垂直ではなく角度をつけて設計されているハンドルもあるようなのですが、図面を公表しているメーカーが少ないために確認できません。
※ また、高さを『ハイト(height)』と表記しているバーはステムクランプ部〜ハンドルエンド(端)の高さの可能性が高いです。

今回は、この図の採寸方法を『基準』として話を進めます。

このライズしている量はメーカーさんによって『インチ』だったり『ミリメートル』だったりで示してますので『1インチ=25.4mm』を覚えておくと良いと思います。

■ ライザーバーの2つの『スィープ』について

ライザーバーの『スィープ』は、『アップスィープ(上向きの角度)』と『バックスィープ(後ろ向きの角度)』の二つの表記があります。

横図はこの状態を基準にして角度を決めてますよってことです。

フラットバーの『角度』の表記は通常一種類しかありません。
これは、クランプ部の中心とスィープが始まる点(曲げ始めの点)が一直線に揃っているために製作上1つの数値しか必要ないからです。

それを好みの状態・角度になるようステムに固定して使用します。
通常、この角度を基本後ろ、そして少し上向きに角度がつくように取り付けることが多く、この角度を『上向き(垂直)』と『後ろ向き(水平)』の角度に分解したものが『アップスィープ』と『バックスィープ』となります。

ライザーバーの場合、この2つの『スィープ角』をあらかじめ決めて作る必要があります。

なぜなら、ライザーバーは『ライズ』されているために、取り付け角度を変えるとそのグリップ(ハンドルの端・エンド)の位置が大きく移動してしまうためです。

このようにエンドの位置が大きく変わってしまうので、基準となる角度(この場合はライズが垂直になる)に対して『上向きに○度』『後ろ向きに○度』といったように予め角度をつけて作られているわけです。

スィープ角は、人間の手首の関節の自然な角度に合わせて必要となっていると考えています。

マウンテンバイクのハンドルバーに対してライダーが行うアクションは、『引く』『押す』『支える』がありますが、手首関節の可動範囲が制限されているとこれらの動作が満足に行えません。

また、アップスィープに関しては、上記の理由に加えて手が滑り落ちにくいように端を上げておくと言う理由もあると考えています。

ハンドル幅や位置によっても角度は変わりますが、目的によっても最適な角度は変わります。

最適な角度は、乗り方(シッティング・スタンディングどちらを主にするかや、アクションをするのか、安定して乗るのか)、自転車自体の設計(シッティングであればサドル位置から、スタンディングであればBB位置から)、そして何より『個人の体格・骨格・癖・好み』によって変わります。

この辺りについては、また別の機会に触れます。

■ 取り付け角度について

このように設計上の基準角度は存在するのですが、必ずこの角度で取り付けなくてはならないわけではありません。

これらの角度は、当然その用途に向けて、その用途向けの自転車の平均や、シグネチャーライダーに合わせて設定されてますので、全員に、そしてどの用途にでもその角度が最適になるわけではありません。

ただ、最初にこの基準角度で取り付けると、ハンドルの意図が伝わりやすいと思います。

また、基準角度を元に、現状どのような状態でそのバーを使っているのかが把握できるので、次にバーを変える時にはそれを参考に新たなバーを選ぶことができます。

また、前述したようにライザーバーは取付角度によって大きくハンドルエンド位置が変わるので、ちょっとハンドル角度を変更しただけでハンドルの操作感や自転車そのものの印象も大きく変わることになります。

反対に言えば、それだけ大きく印象が変わるものなので、なんだか自転車がしっくりこない場合、他のパーツを交換する前にハンドルの取り付け角度を少し変えてみるのも良いのではないかな、と思います。

筆者の個人的なセッティングと前輪の上げやすさ

ハンドルには、『操作(操舵)する』他に、『支える』『押す』『引く』といった使い方(力の入力)があり、それぞれに入力角度が違います。


合成角度をどの向きに取り付けるのかですが、個人的には『グリップ(こぶし)〜ヒジ』の直線の角度が『ハンドルを押す / 引く』方向に合わせます。
この『押す』と『引く』の動作は、その状況や目的によってその角度が変わるので、主な目的となる動作の角度に合わせます。同じく『押す』と『引く』では手首の角度が変わりますが、それも含めてその自転車でより多く用いる動作に合わせてセッティングしています。

時々、前輪を上げる時にハンドルを後ろに引くからといって(自転車が水平状態で)真後ろ近くまで合成角度を向けている方を見かけますが、この状態だと動作の最初は後ろに引けますが、前輪が浮き自転車の角度が変わると下向きに引くことになります。
また、動作の初めから体をバイクの後方に置く状態になりやすく、身体の動作が小さくなり前輪が上がりにくくなることがあります。

同様に、現状のトライアルのような前輪を高く上げてからハンドルを引きつけ上に跳ぶような動作をする場合、マウンテンバイク用の角度ではその動きに対応しにくいため、現状のトライアルバーは極端にアップスィープに寄って取り付けられます。

このように、目的やもっとも動作の主眼となる角度が違えば必要とするスィープの方向が変わるため、それぞれの動作と体の各部との位置関係を考えてみる必要があります。

■ 長いライザーバーを切って使おうと思った時に気をつけること

ライズとスィープ角が同じライザーバーでも、ハンドルエンド位置が違うことがあります。

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スィープの曲がりはじめる点が違う時、若干ではあるのだけどエンドの位置が変わるわけです。
図では『バックスィープ』だけですが『アップスィープ』でも位置の変化が現れます。

こうしたハンドルの違いで、もう1つ気をつけなくてはならないのは、長いハンドルを短くして使おうという場合です。

上図の下のバー(赤い線)の場合、グリップを取り付けるまっすぐの部分が短くなります。
ですから、両端を大きく切った場合、ブレーキレバーやシフター、グリップを取り付けるだけの幅が残らないことがあります

ですから「切って使おう」と思っている方は、この『まっすぐな部分』がどれくらいあるのかを確かめ切った後も余裕を持って取り付けられる長さが残るものを探してくださいね。
後々、パーツやグリップを変更した時にやっぱり足りないなんてことになるかもしれないので。。。

■ 最後に

ということで、ライザーバーの角度についてざっと説明してみました。

ハンドルポジションについてはスィープの角度や長さ、体格や目的などによって際限なく話が広がってしまいなかなか難しいのでまたそのうちに書ければと思っています。

もしライザーバーの角度にこだわりのなかった方や、は、ちょっと角度をいじってみるのも面白いと思いますよ。