テクニックを『考える』流れ-『カッティ』を例に(その1)

■ 『カッティ』との出会いと最初のヒント&前提 

 『カッティ』は『ブレーキを使わないで後ろタイヤを滑らせ進行方向を変えるテクニック』というのが僕の理解。

動きが”ちっちゃい”バージョン
わかりやすく大きく動くバージョン

 僕がこの『カッティ』を知ったのは [ fundamental (2009 現在絶版)] というDVDを勧められて見たからで、当時『カッティ』というテクニックの原理どころか存在自体を知らなかったし、できる人は(僕も含め)見渡せる範囲にはいなかったでのやってみようかと思ったわけです。

 そのDVDから得たヒントは3つ

  • 「コーナーリングの”基礎”」として紹介されている
  • 動作の特徴→「自転車を倒し込む」
  • 後ろタイヤを”浮かせる”ような身体動作はない(ように見えた)

 以上をヒントに、試行錯誤をしていくことになりました。

■ 最初はタイヤの「グリップの限界」を越えればいいのでは?と思った

 最初は単純に「後ろタイヤのグリップ限界を越えればいいのでは?」って思ったわけです。

 

 上の図の「タイヤを外に押し出す力が摩擦力を越えれば滑るよね」っていう単純な思いつきです。

 コーナーリング中、後ろタイヤを外側に押し出す方向の力のほとんどは『遠心力』ですが、地面との摩擦力によってその力は受け止められているため、普通に曲がってる状態では大きく滑ることはありません。

 ですから、この『後ろタイヤを外に押す力』の力を増やそうと「(内側から)外へ押す」ようなイメージの動作を試してみました。
 具体的には「コシをできるだけ低くしておいて→足で横方向に押す」動作ですね。

 しかし、これっぽっちも滑りません。

 どんなにバイクを倒しても、どんなにスピードを上げても、前タイヤへの荷重・後ろタイヤへの荷重をいろいろ変えてみたりなどを試してみても、やっぱり滑りません。
(バイクを寝かしてスピードを上げると、前タイヤから滑っていくことの方が多いという知見を得ました)

 身体をタイヤの接地点の内側に位置させるというのは難しく、限度を超えると滑る前に倒れてしまいそうになります。

 また、足で内から外に押そうとしても、脚の付け根(股関節)と足を伸ばす力を支えるとなる『重心』はサドルよりは高いところに存在するため、『横に押す動き』をしても『下に押す力』も発生してしまうからかな、と考えました。

 いつまで経ってもできないのでどうやら「足で横(外)に押す」ではないらしいと判断し、別の方法を探り始めます。

 次に試したのは、「前タイヤを中心に小さく素早くターンして後ろタイヤを遠心力でぶっ飛ばす!」という動作でした。
 ノーブレーキジャックナイフターンを低く実行→後ろタイヤが地面引き摺るようなイメージ。

 これはちょこっと滑る(というか浮く)ことはあったんだけど、ガッガッガ!!って弾かれるような感じになりますし、グリップの高い路面では難しい。そして一歩間違うと『つんのめり』がすごくて不安定この上ない。

 これでは「コーナーリングの基礎」というヒントからは随分と外れてしまっているように思います。

 もう少しこの『カッティ』という現象についてその原理から考えないといけないな、と考えました。

 そして長い長い試行錯誤が始まるのです。

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