フォーク(ヘッド角)変更に影響される”長さ”

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先日、数人で話していた時に、「ヘッド角の違いによりポジションにはどんな変化が出るのか?」というお話になったので、それについて考えてみます。

ポジションは「垂直」を軸に考える

まず押さえておく事として、ポジションを考える時は「水平」と「垂直」の変化を見るようにしています。
それ以外の「長さ」は、起点と角度によってその意味がだいぶ変わってしまい「数値の意味」が曖昧になりがち。もちろん、フレーム設計上はどれも大切な数値です。

「垂直」にこだわるのは「重さ(荷重)」は常に垂直に発生するから。そして「水平」は「重さ」の作用する場所からの距離を測るのに適しています。

 

フレームのヘッド角変更と変化

まあ、とにかく図にしてみました。
head1

緑色の自転車の後に赤い自転車が隠れています。分かりにくくて申し訳ありません。
緑色の自転車は赤よりヘッド角を3度立てて作図しました。他の数値は全て一緒です。

まずは、トップチューブ長(水平)に注目。
水平距離では緑色の方が長いですね。これはBB(=ボトムブラケット)からの水平距離でも同じです。

当然、前車輪の中心からヘッド位置までの水平距離も変化します。
この図の場合、赤い自転車に比べ緑の自転車では「自転車全体(ホィールベース)に対して身体(の重心)が前に位置」するようになります。
※ヘッドトップも、前輪軸に回転する為に高くなりますし、ハンドルもヘッド角の変化により若干低く遠くなります。

 

次にヘッドトップ位置を固定し、ヘッド角を変えた場合の絵です。
head2

購入時に各部サイズまで調べる方には、こちらの方がイメージしやすいと思います。
トップチューブ長が同じであってもヘッド角度が違うと、前輪の中心=ハブ軸の位置は変化し、この場合であれば、緑の方が赤い方よりも車輪が手前にくることになります。図ではサドル位置からの距離になっていますが、これは「BBからヘッドトップまでの水平距離(リーチといいます)」でも同じ事が言えます。

つまり、これも緑の方が相対的に前輪が手前にある(=全体に対して身体が前に位置する)事になります。

実際には、同じ用途の自転車でヘッドが3度も変わる事はあまりありません。ですが、すこし極端な事例を考える事でポジション変化の特性を捉えやすくなりますね。
また、こうして変化の特性を捉える事は、ポジションを煮詰めていく上では大事な要因です。

実際には、ヘッド角の変化により、ハンドリングにも影響が出る(立つとクイック=軽く感じるようになる事が多い)ので、移動変化とのバランスが大事になります。ヘッド角に対するハンドリング特性についてはまた改めて書こうと思います。

 

フォーク長の変更による変化

さて、次に実用編です。
自転車は何らかの理由で「フォークを差し替える」ということがありますね。
もちろん、これによっても自転車には様々な変化が現れますのでそれについても考えてみます。

同じフレームに異る長さのフォークを取り付けた図を用意しました。オフセット量は変わりません。
モデルはサスペンションフォークとリジッドフォークを想定しています。

赤と緑のフレームは同じものです。ここでは、緑の自転車のフォークを短くした前提で話を進めます。

fork_change_hight
この図ではBBの水平移動量については触れていませんが、若干変化があります。が、数値として僅かな為、無視。

まず垂直方向での変化。
赤から緑をみた場合、ヘッドトップ位置は下がり、BBの位置も下がっています。

フォーク長の変更により、フレームは「後輪軸を中心に回転移動」するので、後輪軸に近い方が移動量が少なく、遠い方が大きく移動する事になり「BBの移動量 < ヘッドトップの移動量」となります。
BBよりもヘッド位置の変化が大きい事から、ハンドル位置は「地上高」でも「ヘッド ー BB = ポジション高低差」 でも低くなります。

 

fork_change_suihei
この図ではBBの水平移動量については触れていませんが、若干変化があります。が、数値として僅かな為、無視。

次に水平方向の変化についてみてみます。

BBを起点に考えます。わかりやすいので(笑)
自転車に立って乗っていると思ってください。

フォークが短い緑の自転車の場合、赤の自転車に比べ、「ヘッドトップが遠く」なり、「前輪は近く」なります。
この時、ヘッドの水平移動量は前輪の水平移動量よりも多い。変化の起点が後輪軸ではない為(フォーク長の変化とそれによるヘッド角の変化の為)です。

なので、水平の移動をみた場合にも、ヘッドトップは遠くになり、また前輪が近くなる事から、前輪への荷重が増える事になります。

※そもそもヘッド角の変化だけでも若干ではありますがハンドルは低く遠くなりますね。

 

そしてサドルの位置について。
フォークを短くすると、サドル位置も下がり、前に移動する事になります。
地面から見たサドル位置は変化しますが、BB〜サドルトップまでの距離は変化しません。ですが、BBに対しての水平や垂直方向のサドルの位置は変わるので、フォークを換えた場合、必ず再チェックが必要です。
※サドルに座ってのペダリングについては専門外でもあるので、他の方にお任せ。

 

さて、フォーク長変更についてまとめてみます。

同じフレームでフォーク長を短くした場合、ハンドルとステムを変更しなかった場合

  • ヘッド角が立つ
  • 重心が低くなる
  • ハンドルが低く遠くなる
  • 前輪への荷重が増える
  • サドル位置も下がり前に移動する

という事になります。
自転車に対しての重心の考え方は、また別に書きます。

ちなみに、サスペンションフォークでは「サグ(ライダーが乗った時にサスペンションが縮む事)」を変化させる事により同様の効果を求める事も出来ます。ただし、若干の変更にとどめて置く事が賢明だと考えます。

 

まとめ

ヘッド角が変化するだけ、いろいろな変化が生まれますね。
変化した場所(この場合は)のみをみるだけでなく、必ず自転車全体での変化、ポイントごとの水平と高さの変化を見る事で、自転車がどのように変化するのかがわかりやすいと思います。

また、ポジションを考える時には「身体が出力を得やすい」事も重要です。雑誌などでは主にこの方面からの記事をよく見かけますね。ただ、エンジンの出力を上げても、そのエンジンをどう配置するかで自転車の挙動は変化しますし、荷重の前後バランスなどによって走る自転車も走らなくなってしまう事があります。
だから、自転車のポジションを考える時には、身体(出力)からの観点だけでなく、重力や前後バランスも考え、目的に応じて変化すると考えています。

自転車の中の1つの数値だけに囚われる事なく、バランスを考え、自転車の数値を読み自分の乗り方&フォームを考えていくと、より楽しくなるのではないかと思います。と、いうか僕はそこが楽しいのでこのような事を書き連ねているのです。