自転車に乗るのにどうやって安全を確保するのかって事をいろいろと。
先週からそういったニュースをいくつか見聞きし改めていろいろと考えてしまいました。
結局のところ、どんな事でも起き得るとおもって自分で安全な部分=安全マージンを確保するしかないのかなぁと思ったしだい。
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先日、自転車アニメで登場人物がレース中にフレームにクラック(ヒビ)が入ったのに、そのままレース続行を決断する場面がありました。
もちろんフィクションですからその出来事と表現にはなんの不満もございません。演出ですし僕もお話を楽しんでますし。
ですが、現実であればとても危険なことですよね。
疲労によって自転車(金属フレーム)がクラックが入ってから破断するまでには段階があって、
- 初期:小さなヒビが入りゆっくりと進行。無音・又は小さなキシミ音。
この段階では1度のストレスでの破断が小さい為、小さなギザギザ。そして断面がこすれあって滑らかになります・稀に錆などもある - 中期:一定の範囲を超えヒビの進行が加速。パキパキといった音。
1度のストレスによる割れが長くなり、破断面が少し大きなギザギザになる。進行がはやいので破断面さほど滑らかにならない。 - 後期1:大きな範囲が一気に割れる。バキ、パカンといった音
多くの部分が一気に割れる。大きく均質な断面。場合によっては全部が割れる。 - 後期2:後期1でも割れずに残った部分が引きちぎられるように破断→完全破断。状況によってはない場合もある。
(引きちぎったような素材自体の変形と破断面)
※ 設計の想定よりはるかに大きな負荷がかかる場合はこの限りではありません。
※ 一般的な金属フレームの場合であり、カーボンなどでは異ります。
※ じっくり調べてみたら、塗料の縮みでしたって事もありますけどね。
ちなみにカーボンフレームでは(何かをぶつけたのではなく疲労による破断の場合)亀裂が表面に現れた時点でいつでも折れる可能性があります。
先程の物語中では大きな音と一緒にクラックの伸張が目視できる状態ですから、既に中期に差しかかっていますので、いつ後期に進行して破断をしてもおかしくない状況。
フレームが折れればとうぜん深刻な事故につながる可能性があります。
なので実際にはクラックと思われるものを発見した時点で乗るのを止める。
また大抵の場合、金属フレームのクラックは溶接部付近から発生しますが、稀にそうではない箇所からも発生します。
これは、フレームを構成するパイプ(素材・厚みなど含めて)の強度が足りていない事が主な原因だと考えます。
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で、先週ニュースで折畳み自転車の破断による重傷事故が流れていました。
こちらは上にも書いた稀なパイプ中央部からの破断です。
[毎日新聞] 自転車:走行中突然ボキッ 転倒し重傷 訴訟に http://mainichi.jp/select/news/20150301k0000m040082000c.html
この記事中にある国民生活センターのテスト結果というのはこちら。
独立行政法人国民生活センター>商品テスト概要より [2013年12月:公表]受付番号:25072 http://www.kokusen.go.jp/kujo/data/k-201312_21.html
この販売会社さんもJIS規格に合格している事を強調されていますが、国民生活センターでの商品テスト概要を読むと製造過程での問題 を指摘しており、同型品のJISテストで 破断しています。推測ですが、おそらくパイプを製造又は成形する過程で「割れ」が生じていたのではないかと考えています。
現在(2015.3.11)他に消費者センターなどに寄せられた同型品の報告は見当たりませんので、ほんとうにたまたま問題があったのかもしれません。(ただし毎日新聞の記事によると販売業者は製品に問題があったことを認めているようです)
それまでの使用状況もわかりませんしね。
ただ、この自転車について回収やリコールなどの措置をとらないとの事ですので、所有者が自分でその使用を判断しなければなりません。
で、僕の現状の判断としては「この自転車の使用には相当注意したほうがよいでしょう」です。
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こういった話では「低価格だから」「生産国があそこだから」という事で考える事を止めてしまい、その後一括して忌避してしまうことがあります。
確かに有名メーカーの一定価格帯以上のものであれば信頼は大きくなりますが「絶対に」大丈夫かというと決してそういうわけでもありません。
実際、いろんなメーカーが様々なリコールを行っています。
消費者庁リコール情報サイト http://www.recall.go.jp/result/ ※ 「検索欄」に「自転車」やメーカー名を入れると自転車の情報が出てきます。
また、ここに出ていなければ「絶対に安全」というわけでもありません。
リコールや回収修理は問題が起きてから発表されるケースも多いからです。
信頼されるメーカー・ブランドというのは、リコールや不具合が少ない上に、いざ出た時に対応が早く誠実・確実である事もその条件に上がると思いますよ。
そのあたりはやはり多くの事例に触れている自転車屋さんが良く知っていると思います。
ただ、どんなものであっても世の中に壊れないものなどなく、異音や異常などに注意しながら乗るくらいのつもりでいたらいいのかなと思います。
どんなものでも疑う気持ちを持つ事で、「危険までの安全距離=安全マージン」を大きく取る事ができると思います。
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改めて振り返ってみると、自転車というのは恐ろしく簡単にスピードが出る上に身体を守るものがヘルメットだけ。
小石一つで容易にバランスを崩しますし、それに類するような障害は道路上の至るところにあります。
自転車での転倒による死亡事故も多数起きてしまっています。
僕自身もよく間抜けな転び方しますし、これからどんなに上手になったって何かの拍子に転んでしまうんでしょうね。
で、結局のところ「壊れるかもしれない」「転ぶかもしれない」ということを忘れず、その「かもしれない」を心のブレーキにして、「安全マージン」をできるだけ大きくして乗るしかないのかなぁと。警察官の方の受け売りなんですけどね。
自転車は楽しいものですが、同時に危険も多く含んでいます。
結局、自分の身は自分で判断し守るしかなく、その為には機材面・操縦技術面、そして自分の中で少しでも安全マージンを多く取れるようにする事だと思います。
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面倒くさい話になりましたが、皆様が楽しい自転車の時間を過ごせますよう願っております。