前回(年末だけど…)に「ちょくちょく書く」みたいなことを書きながら結局間が空いてしまったダメな僕です。
みなさまご機嫌いかがですか?
ちょっと気になったことがあったので、それについて書こうかと思います。
要約すると「子どもさんなどが自転車乗れるように練習する時に長い坂道だと危険ですよ」ということです。
知ってる人には当たり前であっても、知らなかったりそのリスクをうまく捉えられていない方もいるようなので書いてみました。
==
まず気になったのはこちらの『独立行政法人 国民生活センター』さんによる注意喚起です。
【 国民生活センター 】
・坂道や道路でのペダルなし二輪遊具の事故に注意!
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250319_1.html
いわゆるキックバイクやバランスバイクなどと呼ばれるペダルやブレーキのない『子ども向け二輪車』での事故のことですね。
これを下り坂や一般の道路で使用して接触事故、そして死亡事故も起きていることを踏まえての注意喚起がされています。
ご存知の方も多いと思いますが、こうしたペダルのない子ども向け二輪車にはブレーキがついていないことが多く、販売時に「公道での使用をしないこと」や「防具をつける」などの注意が表示されていますよね。
子どもとしては歩くよりも速く、しかも滑るように前に進むので、楽しいと思いますが、スピードが出た時に転ぶと顔から落ちたり、地面に立ったハンドルの端に胴体部から落下し、内臓などにひどい損傷を受ける可能性もあります。
(ペダルなし二輪車ではないですが、小学生が自転車で起こした事例があります。)
ヘルメットなどの防具をつけるのももちろん(習慣付の意味でも)大切なのですが、遊ぶ時には保護者がきちんと見守って、坂道などでは使わないように気をつけましょうね。
==
これを見て思い出したのは、「自転車に乗る練習をする時、下り坂で行うと良い」としてインターネットやテレビで推奨されていたことです。
自転車に乗る練習に『下り坂』を利用する方法は確かに有用ですが、これを下り坂が続く場所で練習させるテレビ番組やイベント内講習を見かけたことがあるんですよ。
で、「これはちょっと間違うと危ないぞ」と思ったんですよね。
僕自身も『補助輪外し』の講習をしていた時、下り坂(スロープ)を利用していました。

ですが、スロープを利用するのはスタートだけ。
上の写真の赤い台は最後のお楽しみ(速度順応)用で、実際には奥に見える低い青いスロープの方をよく使います。こっちの方が怖くない&危なくないし、自分で地面をキックして進む力とその感覚を得るなら斜度が小さい方が良いかなって考えてるからですね。
うまくキックできない時には、ちょっと押してあげるなどの補助をします。
自転車のスタート時は、速度が乗らなくて不安定になりがちですから、それを下り坂によって勢いをつけてしまおう、とこの方法を思いついたんですよね。
(ちょうど使えそうなスロープを持ってたっていう理由も大きいです。)
この方法なら、下り坂スロープはすぐ終わって平地になります。
スロープ終わりの速度以上は出ませんし、そのまま何もしなければだんだんと各種抵抗などによって減速していきます。
ですが、ずっと続く『長い下り坂』の場合、自転車はずっと加速し続けます。

緩い斜面がずっと続く場合の下りの加速度を計算(初速0,各種抵抗は見ないふり)してみると以下のようになります。
● 10%の勾配(水平1m進むと 10cm高さが変わる)
* 二つ上の写真の奥にある「青い台」がだいたい10%
・加速度:0.975 m/s²
・3秒後:速度 10.53 km/h , 移動距離 4.39 m
・5秒後:速度 17.55 km/h , 移動距離 12.19 m
● 5%の勾配(水平1m進むと 5cm高さが変わる)
・加速度:0.488 m/s²
・3秒後:速度 5.27 km/h , 移動距離 2.20 m
・5秒後:速度 8.78 km/h , 移動距離 6.10 m
身近で比較できるスロープとしては、車椅子などが通れるように建物の入り口に作られるスロープの勾配が最大1/12(勾配=8.3%)と定められています。
実際には、最初に地面をキックするの初速があるので、もっと速いと思います。
(各種抵抗を考慮に入れてもたぶん速い)
10%の勾配では、5秒経過すると速度は時速17.5kmに達し、これはだいたい大人がシティサイクルを気持ちよく風を感じて走る速度です。
自転車にまだ慣れていない子どもにとっては怖いと思ってしまう速度です。また視点の低い子どもの体感速度は実際よりも速く感じますので余計に怖いですね。
また、子ども向け二輪車の場合は、そのような速度で走ることは想定されていませんし、減速しようと足を地面に伸ばしても弾かれてしまいバランスを崩す恐れのある速度です。
もっと緩い5%の勾配でも、スタートしても3秒後には時速5km(大人が歩く程度)の速度になり、2.2m移動しているので手を伸ばしても届かないところにいることになります。
5秒経過すると、時速9km、距離は6m離れるので、このタイミングでスタート地点から追いついて静止するにはかなり頑張ってダッシュしないとなりませんし、外部の人間が停止させるのはさらに大変です。
小さなお子さんの場合は、乗れるようになる前もですが、乗れるようになった後の方が気をつけないとなりませんね。
一人で乗れるようになるとちょっと目を離した隙に勝手に走り出してしまいます。
すると、数秒で手の届かないところまで進んでしまうことは上の計算の通り。
また、乗れるようになってもブレーキをうまく使えないこともよくありますし、速度が上がると怖くなってコントロールを放棄してしまいがちなので、運が悪いと本当に酷い事故になってしまいます。
ですから『ペダルのない二輪車』だけではなく、『自転車に乗れるようになったばかりのお子さん』も坂道や自動車の近くなどでは乗らない・乗せないことが大切だと思いますよ。
==
「自転車の練習するには下り坂がいいよ〜」って言っても、安全性を考えると斜度や距離に条件があるわけです。
ですが、『下り坂』という単語だけを受け取って実行してしまったり、それを誰かに薦めてしまったりするのはあまりあまり感心できることではありませんね。
「これがよいらしい」という情報を手に入れても、一度それを咀嚼し、「それを行うことでどんな良いこと・悪いことがあるだろうか」としっかり考えてみるとよいと思います。
特にイベントや講習として人を集めて練習してもらう場合などには注意が必要です。
これは、どんなことでも言えることだと思います。
あらゆる情報が簡単に手に入り、またおすすめとして押し寄せてくる時代ですから尚更ですね。
ということで今回はここまで。
ではでは。