トライアルでよく使われる「後ろタイヤを振り出し→前を引きぬく横とび降り」についてを短い動画にし、2月5日に公開しました。
僕が知ってる頃には「リベラ」と呼ばれていたのですが、時代とともに名前もいろいろ変わってるので最近なんて呼ばれてるのかはわかりません。。。
「ダニエル」と一緒で「リベラ」も体操の技名と同じようにそれを得意としていた人の名前を使って(勝手に)そう呼んでいたもので、日本国内でしか通用しない名称です。
このテクニックがトライアルの子ども達の間などでよく使われている(いた?)のは、ホッピングに比べてあまり力を使わないことで済むことのと、自然と後ろから着地になるのが大きいのかな、と思います。最近は自転車もずいぶん軽くなったので、ホッピングの労力が減り使用頻度は減っているように感じていますけどね。
静止状態からホッピングで横跳び降りをする場合、両輪とも一緒に上に浮かさないとならないので、大きく速く体を動かす必要があります。その後、着地する時にも腕で前を引きつけて後輪着地にしないと、手で支える力が大きくなって痛いんですよね。
静止(〜微速)で、ブレーキでタイヤの回転をロックしている場合は、後輪着地によって着地の衝撃を和らげることができますから、このテクニックに有用性があるわけです。前タイヤを引き抜くのを失敗しなければ、ですけどね。
以前の動画で「平地着地でのドロップオフでは『両輪着地』が基本。後輪着地はバランスを崩す」としたのですが、これは前に進む勢いが強いためで、極微速〜静止で行うテクニックでは、後輪着地のメリットが出てきます。
この動画のように着地時にブレーキで後輪の回転をロックしている場合、後輪着地→前が落ちる間に身体で後ろに引っ張ることによって前が落ちる速度を遅くする=力をゆっくり吸収することができるためです。この時、後ろへ引っ張るができないと、落ちた勢いの多くを手や腕で支えることになり大変ですしとても痛いです。また、トライアル競技では、ピンポイントに着地しそのまま静止することが必要なので重宝します。またこの時、前タイヤが落ちるに従って前に進む力に変わるので高いとび下りでは落下の力を前に向けて逃すということもできます。
「後ろを浮かせた状態から前を引き抜く」という動作をするには、まずジャックナイフ「前タイヤに乗っている」状態が必要で、身体が思ったように動いているのかの確認にもなります。以前に公開した「ジャックナイフでいろいろやる」と同じで、何かを足すことで基本の動作をチェックするみたいな感じですね。
また、動画にもあるように、ここからの発展テクニックに「走りながらよこ降り」や「ヘリコ(ヘリコプター)」などにもつながります。
前タイヤを引き抜くときに、前ブレーキを離してタイヤを転がしながら行うこともできますし、この方法だと前タイヤを引き抜く力が小さくて済みますが失敗するとリスクが大きいので、別途平地で「スイッチ」の練習を十分にしてからの方が良いと思います。
前を引きぬく(引き上げる)時に前ブレーキを離したりそもそも使わなかったりするスイッチとはまたちょっと違う感覚なのですが、基本テクニックのコンボ技なので手が届きやすく「できた感」も得られやすいのではないかと思いますよ。
==
以下、軽く解説。
■ 平地で練習の意味
とび下り系のテクニックは、失敗した時のリスクが大きいので、まずは平地かできる限り低いところで練習するのが鉄則です。
個人的な経験ですが、この横とび降りを覚えたての頃に90cmくらいの高さから前が抜けずに失敗し、後ろにひっくり返って地面に後頭部から落ちて意識を失ったことがあります。地面が土だったのでそれですみましたが、アスファルトだったらと思うと怖いですね。
今回の平地での練習では、目印として「木材」「まな板」を置いています。
「木材」が「段の端」。
「まな板」が「前タイヤを置くところ」。
前タイヤを置く「まな板」は、「木材」を越えなくて良いところにセットします。
これは、前タイヤは高く上げる必要がなく、ちょっとだけ浮いて横に移動できれば問題ありません。
実際の横とび降りでは、後ろタイヤが前タイヤを支点にして降りる時の回転を利用して前タイヤを引き抜くので、平地でするよりも前タイヤを浮かせる労力が小さくなります。
なので、平地での練習で、あまりしっかり前が浮かなくても、実際に段差(着地の方が低いところ)で行う時には問題になりません。(もちろんできるならできた方が良い)
目標としては「目標(板)」に載せた前タイヤが、横に降りることができれば十分です。
==
■ 「ステップ1 :後ろタイヤを横に振り出す」について
最初は、「後ろタイヤを横に振り出す」ことだけしっかり身につけます。
動画ではスペースの都合上目標に対して斜めに入っていますが、木材に平行に走ってくる方が楽にできると思います(すみません)
注意するのは、後ろタイヤだけを動かそうとするのではなく、体もしっかり着地点に向けて動いていくことです。そうしないと、実際にとび降りる時にも、自転車は落ちようとするのに身体が段差の上に残ってしまいますよね。
この身体の横移動は「(動かす側の)ハンドルグリップを上から見下ろす」ことで自然と為されるはずです。もし、着地後に元いた方へ倒れてしまうようなら、それは身体がきちんと移動していない証拠です。
● 後ろ振り出しがうまくできないなーって方は、まずジャックナイフターンからおさらいですね。
こちらの動画の0:45〜の動きが今回のものと同じです。
→【How to】ハンドルを意識したジャックナイフターン
==
■ STEP2:前タイヤを運ぶ
次に、後ろタイヤを振り出した後、前タイヤを顔の下まで運ぶ練習をします。
後ろタイヤを振り出し→着地した時点では、顔は移動した側のグリップの上にあるはずです。
後ろタイヤがしっかり着地したら、そのまま上半身だけ上に跳ねるようにして、肩でハンドルを引き上げ、顔の下に前タイヤを運んできます。
大きく動かす時には、顔も動かします。ですが、顔の下に前タイヤを運ぶことに変わりはありません。
前を浮かす時から、前タイヤの目標地点を高い位置から顔の正面で捉えるように意識し、肩でハンドルを吊り上げて顔の下に持ってきます。
着地時にやはり動く前の方へ倒れてしまうようであれば、自転車だけを動かそうとしていることが考えられますので、もう一度動作をチェックしてみてください。
==
■ STEP3:後ろタイヤ着地前に前を引き抜く
後ろ→前の順で横に動くことを覚えたら、それを後ろが宙に浮いている間に行います。
また実際には、後ろが下りる際接地点は自転車の回転に伴い後ろへ移動する
↑やってることをいちいち書くとこの画像みたいになるのですが、全部を意識しながら動作するのは無理なので、できない時にどれが原因かを考え、そこだけ修正するようにしていけば良いのかな、と思います。
基本的には、うまく前を引きぬくためには、その動作の前に「前タイヤを上から押し込む」動作を入れます。
特にサスペンションフォークがついていると、前を引き抜こうとしても縮んだフォークが伸びるだけでなかなか前タイヤが浮いてくれないことがあります。柔らかめにセッティングしているとなおさらですね。
前を引きぬく前に、いったんサスペンションフォークを強く押し込むと、サスペンションがが縮んで反力が強くなり、その後の身体の伸び上がりも速く強くなるので浮きやすくなります。
または、前→後ろへの身体の動作を「リズムよく弾む」イメージで行うと、同じようにサスフォークを縮める効果と、その後の伸び上がりの力が発揮されやすくなります。この時、前タイヤには意識して「上から」乗るようにすると良いですね。
また、前を引きぬく時に「後ろタイヤを下げよう」「後ろタイヤにスイッチしよう」と「後ろタイヤを下すこと」を意識すると、前タイヤへの動作が半端になりがちなようです。
後ろタイヤは重力によって落ちるのに任せ、その力によって生じる回転する力をうまく利用して「前タイヤを抜いたら結果的に後ろが先に落ちた」くらいのイメージが良いと思いますよ。
■ 実際の段差では
動き始める地面より着地する地面の方が低ければ、後ろタイヤが下りる時間が稼げる(前後の高さ関係や後ろの勢いも増して利用しやすい)ので、あまり平地で完全にできないからといつまでもそこにこだわる必要はありません。
実際の段差で行う時jは怖さを感じずにできるように、まずは後ろが先に落ちてしまっても大丈夫なほどの高さ(20cmくらい?)から始めると良いですね。
もし適当な段差が近所になければ、下り坂でも大丈夫です。
また、段差から降りるのに慣れない時には、後ろタイヤを振り出す動作が小さくなってしまうことが多いようです。これは、怖さもあって早く動作を終えてしまおうとしてしまうのかもしれません。僕も経験があります。
段差から降りる時に、どうしても前が抜けない時には、この「後ろを出す動作が小さくなってる」ことが考えられるので、意識して前にしっかり乗り、後ろを振り上げるようにし、しっかり前を押さえ込んでから引き抜くと良いと思いますよ。
==
■ あとがき
今回紹介したテクニックは、いろんな動作が複合していますが、その一つ一つは平地でできるものです。
順番通りにタイミングを合わせることと、また後ろタイヤがどのように動くか(落ちるタイミング)を感覚で捉えるのにも役にたつかな、と思います。
動画の通り、一般的なマウンテンバイクでも十分に可能なテクニックですので、ちょっとでも興味を持っていただければ幸い。
それではまた。