動画|『【すわってウィリー】「はじめの上げる」と 「ブレーキ」』の補足説明(2022.10.29 記)

 10/25の短い動画は、「すわってウィリー」の練習方法についてでした。

 僕がレッスンなどでウィリーの指導をする時の手順はだいたいこんな感じ。

 1分でまとめるには時間がないので、最初の「前タイヤを上げる」と、上げた後の「ブレーキ」についてのさわりだけになってしまいましたけどね。

 さすがに内容を端折りまくったので、ここで補足しておこうと思います。

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 ウィリーは、「前タイヤを上げたまま後ろタイヤだけで走っていくテクニック」です。
 おそらく、世界で最も有名なテクニックですね。

 僕の周りでは、ウィリーは基本的に「すわってするもの」で、「立ちこぎウィリー」はその亜種?のような扱い。ひょっとすると「そんな違い関係ないよ」って方もいるかもしれませんね。
 でもまあ、ここでは「ウィリー=座ってウィリー」として解説をしていきます。

■ サドルの高さ

 最初に「サドルの高さ」について。

 ウィリーでまっすぐ安定して走る場合、サドルはある程度高い方が前タイヤをあげやすいし安定します。

 サドルの高さに違いがある時、同じ高さまで前タイヤを上げる(角度が変わる)と、サドルを高く設定している方が、その「高さ」の変化が小さくなります。


 ウィリーにおいて、サドルは身体の重さのほとんどを支える点ですから、その高さの変化が大きいほど大きな力が必要になります。
(図では「始点」と移動の「頂点」の高さの差を比べています)
 この時、あまりにサドルが低いと、無意識におしりをあげてその力を逃がすような動きになることがあります。

 また、前タイヤが浮いてからでも、サドルが高い方が後方に位置することになります。
 特に、図左のように後ろ車軸よりも大きく後ろにある場合は、上から力をかける(体重を乗せる)だけで前タイヤが上がる働ききが大きくなるので、前から落ちようとする自転車との力の拮抗を作りやすくなります。

 左右のバランスについてもサドルが高い方が安定します。
 これは、手のひらに棒を立てて載せてバランスを保つとき、短いよりも長い棒の方が安定するようなものです。(超ざっくりですみません。微妙には違います)
 この時、サドルにしっかりと座る(体重を乗せる)ことで身体も安定し、よりふらつきにくくなるのだと考えられます。
(他にも理由はいくつか考えられるのですが、まだそこまではっきりとわかってるわけではないのでまた今後考えていこうと思っています)

 反対に、あまりにサドルが低いと、サドルに体重をかけるためには背中を後ろに大きく倒す必要があり、慣れないとちょっと怖い感じがします。
(なので背中が倒せず、前タイヤがうまく上がらないという事例を見かけます)
 同様の理由で、しっかり体重を乗せることも難しくなります。
 何よりペダルがこぎにくい。

 ただ(ペダリングに支障がない程度の低さであれば)小回りなどはしやすいんですよね。慣れが必要なだけで。

 また、最初からロード並みにサドルを高くすると、後ろにひっくり返りそうになった時に危ないので、覚える時には「両足が地面につき身体を支えられるくらいの高さ」で練習すると良いということで紹介をしました。

 ウィリーでは、サドルの高さとその後ろに「しっかりと座る」というのは「最大のコツ」なので意識するようにすると良いと思います。

 

■ 片足をついて前を上げる

 いきなり走りながら前を上げるのは難しいですし、自分の動きがどうなっているのか確認しづらいので、止まった状態で片足をついて前を上げることをしてみます。
 これは、後に出てくる「イチ、ニ(1、2)」で上げる動作タイミングの「2」にあたります。

 サドルを上げているので、足をつく場所に台になるようなものを置いて、しっかり片足で立てるようにします。
(動画には入れ損ないましたが、反対側も練習すると良いと思います。)

 まず、サドルにしっかり座り、おしりを支点に頭を前に出すように深く背中を倒します。これは、そのあとに前を上げる時の「上半身の助走」を取るためです。

 ペダルの位置はできるだけ高くで、前に向けて踏み出すように準備をします。
 (これも「サドルの後ろに座る」と楽にできます)

 その後、ペダルを前に踏み出すと同時に、サドルに座ったまま上体を起こし後ろに倒れるようにして肩で後ろに引きます。

 後ろタイヤ接地点は、ペダリングによって前に進み、高い位置でハンドルを後ろに引くので、前タイヤを浮かせる力が生じます。

 動画で「動作がゆっくり」なのは、早く動くとペダルを下まで踏みぬいてしまうからです。踏み抜くと大きく前が上がりすぎて、サドルからお尻が離れやすくなります。

 あと、視線はタイヤの先を見るように癖つけておくと、自転車の角度がわかりやすく、また身体が自転車に対してまっすぐになっているのかがわかりやすいと思います。
 これは、どんな形でも前を上げるの練習の時には意識すると良い点です。 

 こうして片足を上げたあと、ペダリングを途中で止め、「サドルにしっかり座る(or前に押す)」「ハンドルを肩で引く」「ペダリングで後ろタイヤを前に出す」の三つの感覚を同調させバランスを保つことをなんとなくても体感できればこれは成功です。

 また、この時にギア比についても確かめておくと良いと思います。
 スカッと踏みぬいてしまうことなく、お尻が浮かない程度の力で踏めるくらいのギアを選びます。
 実際にウィリーをする時には、そこから一つか二つ重たいギアを選ぶと良いと思います。

 

■ 走りながらウィリーをする

 やっと実際のウィリーです。

 ペダリングの逆足踏み込みを「1」、利き足を「前に踏み出す」のを「2」、そのあとペダリングを続けるのを「3」とします。
 「3」はペダリングを続けるので「さーーーーーーん」くらいにながーく唱えてください。

 「1」の「逆足を踏み降ろす」と「おしりを支点に体を前に倒す」。
 「2」の「前に踏み出す」と「体を起こして肩で引く」。
 これらを同調させて前タイヤを上げます。

 動画では触れてませんが、この「2」まででまず「前が上がる」ことを試してみます。高く上げる必要はなく「ペダルを踏んで上がる」感じをつかめれば十分。すぐ落ちても構いません。
 それが安定して上がるなら「3」に進みます。

 「3」は、左右ともに「前」に踏み出しながら、その力で前タイヤの調整を続けることになります。

 「2」でとりあえず前を上げて、「3」から先でちょうど良い高さを探るように上げていく感じになります。勢いよくひと踏みで上げてしまうと、それを抑えるのが大変です。
 動画では前後に分けていますが、ここあたりからブレーキをかけることも意識していく方が良いので、とりあえずブレーキレバーに指はかけておいてください。

 「3」でのペダリングも「2」と同じく「前に踏み出す」ことが大切です。
 前タイヤは常に降りようとしているので、ペダリングによる推進力で上げ続けてやるようなイメージです。
 ただやはり、後ろにひっくり返ると危ないので、ブレーキレバーに指をかけておくことは忘れないでください。

 

 この時、前があまり上がらず「やたらと加速してしまう時」は、「押し出すペダリング」ではなく「下に向けて踏み込んでいる」と思われます。

 他にも、前タイヤが上がるけど「3」に繋がらずすぐ落ちてしまう時や、やたらと加速する時には無意識に下の写真左のようになっていると思われます。

 これは、ペダリングの力だけで自転車を上げている場合に多い状態で、肩ではなく手で持ち上げるように下向きにペダルを踏む(またはペダリングの開始場所が低い)時に起こりがちです。下に踏みぬくのでその反動でお尻が浮いてしまったりするのも特徴の一つ。

 また、上の写真右も、ウィリーを始めたばかりの方に多い状態で、ペダルを踏むことに一生懸命なあまりにペダルを踏みすぎたりしておしりがサドルから浮いてしまいます。

 どちらも、一度落ち着いて、「しっかりサドルに座る」「サドルをおしりで押す」の意識をすると解決に向かうと思われます。

 

■ ブレーキをうまく使う

 ウィリーは、どうしても前タイヤが上がりすぎるものです。
 ですから、ブレーキをうまく使うことが必須になります。

 ですが、前タイヤを上げるだけでも大変なのに、なかなかブレーキの微調整なんて難しいですよね。

 動画では「とにかくガツン!とかける」から紹介しています。

 ブレーキには前タイヤを上げる前から後ろブレーキに指をかけておきます。
 そうすれば「上がった→指ギュ!→ブレーキかかる→前落ちる」でそんなに危ないことにはなりません。(前ブレーキまでかけると危ないです…)

 次に、ペダリングしたままブレーキをかけて前タイヤをおろす練習をします。
 ペダリングを継続したまま、ゆっくりとブレーキを「当てて」前タイヤを下ろします。
 特に前タイヤが地面に着く直前にひとこぎ入れられると、着地の衝撃がかなり柔らかくなりますから、いつも落としっぱなしで肩がこる人はちょっとやってみてください。

 「ブレーキによって前タイヤが降りる力」と「ペダリングによって前タイヤが浮く力」を拮抗させることができると、安全に長く続けることができます。ちょっと疲れますけどね。
 ですが、両方ともに弱い力で拮抗を保てれば、使う力は少なくなりますね。

 慣れるにつれて、だんだんと必要な時以外にはブレーキを使わず「サドルとペダリング」の力で前タイヤの高さをキープし、必要な時だけブレーキを「当てて」調整するということができるようになります。

 

■ まとめ

 ウィリーに関係する「力」を整理すると、まず「前タイヤを上げる力」として三つの要素があります。

  • ペダリング(前に押し出す)
  • 肩で引く
  • サドルを押す(乗る)

 反対に「前タイヤを下ろす力」には

  • ブレーキ
  • (ペダリングを弱くするなどの消極的な要素)

があります。

 これらをうまく組み合わせ、調整して前タイヤを上げて走っているのが「ウィリー」という「状態」です。

 例えば、動画の最後の「ペダリングしないでブレーキだけで調整」しているのは、「サドルにかける力」と「肩で引く力」が連動して「前タイヤを上げる力」として働き、ブレーキは「前タイヤを下ろす力」として働き、その「上げる力」と「下ろす力」の調整によってウィリーという「状態」になっています。

 全て含めてそれらを楽に行うようにする最大のコツは「サドルにしっかり座る」で、サドルにしっかり座ることでペダリングも左右のバランスも安定し、また角度変化の変化も察知することができ、楽にできるようになります。

 迷ったら「しっかり座ってみる」を試してみてくださいね。

 

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 1分の動画に対して、とても長い解説になってしまいました。
 ウィリーは、また動画の方でもしっかりしたハウツーにしてみたいと思ってます。
 それまではこの簡易な動画で勘弁。

 

 それでは。また。