自転車破損事故についてのアレコレ

08年の夏、つくば市で起きた自転車破損事故。
TBSのニュース番組でも流されました。
私はその番組で流された以上のコトは分かりませんが、
事故に遭われた60歳の男性は、頚椎破損により全身に障害が残っています。
なにが問題なのか、考えてみようと思います。

■ まずは壊れた箇所について

番組を見ていて、推察できる破損までの経緯です。
男性は、ロードなどにも親しみ、
通常のメンテナンスは問題なく行われていたと思われます。
また、それは、画面に現れたブレーキシューが真新しいコトからも伺えます
(購入は2002年・事故は2008年で6年経過している)

まず、事故を起した自転車は、いわゆるクロスバイクの部類に属する物で、
Fフォークにサスペンションが装着されています。
今回の破損個所はこのサスペンション

このサスペンション、
バネとエラストマー(ゴム)を使ったシンプルな物。

問題は、このバネとエラストマーのみで
サスペンションの稼働部をつないでいた事。
長年の使用によって、フォーク内部に進入した水がバネを錆びさびさせ、破断、
そして事故につながったという推論です。

これがその折れたバネです。酷く錆びてます。
でも、バネって錆びなくても折れる事あるんですよね。実は。
バネの破断箇所は破断したままでは無く、多少丸く削れており、
また内側についている部品も削れている事から、
破断した後、だいぶ時間が経っているものと思われます。

番組中、もう片方のバネはアップになりませんでしたし、
TBSの方があちこち持ち歩いているので、位置の確認が難しく、
断定できないのでここでは触れません。

ですが、片方のバネが折れ、それを放置した結果、
もう片方のバネが負担に耐え切れず、折れる、または外れるかして、
Fフォークが上下に分断したものと推測されます。

事故を起された方は、ハンドルが浮いてくるような感触があったということです。

おそらく、何らかの要因で徐々にフォークが抜けてきたと考えられます。
これ、あり得ない気がしますが、経験上なんとなく無くもないなあって、
ホントここだけ感覚的で申し訳ない。

しかし、疑問もいくつか浮上します。
まず、転倒して「前輪が5メートルほど先まで行った」という証言がありますが、
通常、ハンドルとブレーキワイヤーがつながっている為、
それほど遠くへ行く事は考えられません。
自転車のブレーキワイヤーは、それほど簡単に切れませんからね。

もう1点の疑問は、左右のアウターケースをつなぐブリッジが折れている事。
しかも、両方のレッグの同じ所から折れています。これは不思議。
フォークが抜けて転んだという事は、
アウターレッグと前輪には、さほどのダメージもありません。
人間という重量物が乗らないのですから当然です。
それは、前輪が大きな曲がりも損傷も画面からは見て取れない事から明白です。

ひょっとすると若干の本人の記憶違いとか、
フォークはすっぽり抜けたわけでは無く、
片方だけ引っかかってて妙な形で巻き込んだとか、いろいろ考えられますが、
なんにせよこの2点の疑問は私の足りない想像力では解けそうにありません。

しかし、これらを差し引いても、
このフォークには設計上の問題があると私は考えます。
番組内でも触れていますが、
サスペンションの上下をつなぐシャフトが無いこのサスペンションは、
常に分離の危険にさらされていると思って良いと思います。

■ この事故から考える問題点

この事件が問題としているのは、部品単体の欠陥だけではありません。
多数のメーカーでつくられた部品が、
借りてきたブランドライセンスの元に集められ、完成することで、
責任の所在をあいまいにしてしまっている。という問題です。

今回問題になった自転車は、
そのブランド本社は一切タッチしていません。
ひょっとすると、その自転車が売られている事すら知らなかったかも。
そうしたコトをハッキリと謳われず、
ブランド名のネームバリューを信じて買ってしまう。
OEMですらないこの商法がおおっぴらにまかり通っている。
ブランド信仰そのものの売り方、買い方もどうかと思いますし、
それを真摯に説明しない販売店の販売方法にも問題はあると思います。

また、ユーザー自身もメンテナンスが必要、という発言もありますが、
今回のケースで言えば、専門店だって見落としていた可能性がある。
正直言って、販売店経験のある自分でも見つける自信がありません。
基本的なメンテナンスは行っていたとしても、
なかなかフォークの中まではチェックしませんよ。オイルも入ってないのに。

最後に、番組内では「ユーザーの安全意識」に話が及びました。
もちろん、自分が命を預ける乗り物である以上、
自分での安全点検は必要不可欠です。
ただ、クロスバイクという街中で乗る事を前提としたバイクを購入するユーザーに、
それを任せてしまっていいのでしょうか?

業界で共通認識のようにされている「スポーツバイクだから、、、」
という論法はどこまで通用するのでしょうか?
安全を軽視したユーザー、という発言もtwitterではありましたが、
本当に安全を軽視しているのは、どちらなんでしょうか?

理解ある愛好家が多数だった昔とは違い、
現在は空前のブームから、新規にはじめる人も多くいます。
そうした人たちに、いきなり安全の責任を負わせてしまうコトをヨシとする。
命を載せる乗り物を製造、販売する側の人間が、そうした姿勢でいいのでしょうか。

責任追及や、経緯への疑問よりも、
業界全体での速やかな対応と今後の方針に期待しています。

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